「獣 医 師 の 職 場」(その75)

財団法人 目  黒  寄  生  虫  館

【名 称】財団法人 目黒寄生虫館
     (欧文名:Meguro Parasitological Museum)
【所在地】〒153-0064 東京都目黒区下目黒4-1-1
TEL 03-3716-1264 FAX 03-3716-2322

【沿 革】
  昭和28年,医学博士 亀谷 了の創意と私財投入によって設立・運営されてきた研究機関で,昭和31年本館完成の翌年(昭和32年)文部大臣より許可を受け,財団法人として研究および教育・啓蒙を中心に活動することとなった.少人数で構成される小さな研究所であるが,研究生などの出入りもあり,おもに分類・形態学的な研究がさかんに行われ,いろいろな動物の寄生虫が採集・同定・分類され,所蔵標本として収集された. また,他の研究機関の研究者からの標本の寄贈も多く,収蔵標本の一部をパネルの説明とともに展示・陳列し博物館的啓蒙活動も整っている.
  昭和39年秋には,日本寄生虫学会東日本支部大会を開催し,関東近辺の寄生虫学研究者が集まった.
  昭和52年には展示の改装が行われ,さらに,本館が地下1階,地上6階に新築された平成4年にはそれまでのものを基本とした,より近代感覚の展示となり,博物館的な様相も本格的なものとなった.
  多くの寄生虫学者より,長年にわたって収集された標本や文献なども寄贈され,資料の充実はほかに類を見ないものとなった.新種の記載に用いられた標本,模式標本も多く,国内外からの貸出依頼に対応している.
  創始者(現名誉館長)亀谷 了はこの間,保健文化賞,紫綬褒章,勲三等瑞宝賞,桂田賞(日本寄生虫学会)など数多くの受賞・叙勲を受け,館ともども有名となり,館がメディアに紹介され,また,平成4年の新築・改装の頃からの博物館ブームも手伝って,入館者が増え,その対応に忙しくなっている.
【組 織】
  当館は,館長の下に研究系,事務系で構成されるが,人員は少なく総勢7人で,内3人は獣医師である.
【施 設】
  敷地は163.6m2,1フロアー約90m2の地下1階,地上6階のビル.全体としては研究室と書庫・資料室で,1,2階を展示室として一般に公開している.
【事業内容】
  業務としては,研究,異物鑑定,教育標本販売,ミュージアム・グッズ販売が主体となっている.
  1.研究関係
  寄生虫の分類・形態学が主で,ほかの研究機関とも連絡を取りながら,魚の寄生虫やクジラをはじめとする野生動物の寄生虫について幅広い研究が行われている.
  2.異物鑑定関係
  おもに水産関係の会社あるいは個人から,食品などに見つかった寄生虫らしき異物の鑑定依頼が,年間150件ほどあり,それに対応して回答を出している.
  3.教育標本販売関係
  昭和50年代,日本寄生虫学会の委託事業として,教育用の寄生虫標本の販売を行った.その時の経験を生かし,標本が入手し難くなった現在,医学・獣医学系の大学や看護・医学技術系の学校を対象に各種虫卵液浸標本,原虫の塗抹標本などを教育用に販売している.
  4.ミュージアム・グッズ販売関係
  入館者からの要望もあり,寄生虫柄のシャツ,寄生虫入りキーホルダー,絵はがきなどの当館オリジナルの商品や,寄生虫に関する書籍を集めて販売している.
  その他,蟯虫の検査や砂場の虫卵検査など公的機関からの依頼研究や寄生虫に関する講習会なども業務として行っている.
【特 色】
  研究としては分類形態学的なものが中心となっているので,特に獣医師の必要性はない.しかし,分類を行う上で,幼虫から成虫を得るための感染実験の際には,動物を飼育・管理することが不可欠となるので,獣医学的な知識が必要となる.また,最近では異物鑑定も増加しており,博物館への入館者も年間7万人にも及ぶようになってきた.この異物鑑定や博物館としての入館者に対する説明などにも,寄生虫のみに限らない広範囲の動物および微生物に関する知識が必要であるため,獣医学を生かせる職場といえるであろう.


1 階 展 示 室