獣医師会の決算報告中,財産目録に電話加入権というのがあり,金額が書いてあった.この加入権とはどんな権利なのか,円単位の端数は何か,どこで決めた金額かと疑問に思ったので質問した.明快な答弁ではないが,電話をひいたとき払った金額で昔から財産扱いになっているとのこと.財産なら値のいいときをみて売ってしまったらどうかと言ったら,価格の計上は毎年同じで,売買できる財産扱いになってないという.では何の権利か.
  そう思って電話局に尋ねてみた.「今電話をひくのにいくらかかるのかね.」と.「76,440円です.内訳は契約料が800円,施設負担金が72,000円,それに消費税です.」との回答であった.そしてこの負担金なるものが,世にいう加入権だという.
  「では聞くがね,この加入権なる負担金は,電話をやめたとき返して呉れるのかね.」といったら,「お返しできません.」だと.「ただ,もし電話を移設するときはその分は不要で,廃止するときは電話売買業者に頼めば番号ごと引き取るでしょうけど,今は2〜3万ぐらいですかねぇ.」と.
  「冗談じゃない,それでも権利か.」と憤慨していたら,たまたま週刊誌と新聞にこの話がでていた.
  日本で電話が始まったのが明治23年だが,普及しだした明治40年頃は順番待ちが多く,そこで寄付開通制度として,電柱や電線,セメントなどを寄付した者には優先したが,後に至急開通制度なるものができて,本来の契約金の12倍以上払った者に優先して工事し,それでも順番がこないのでさらに6割も値上げされたとのこと.
  結局,この袖の下をシステム化したのが加入権といわれるもので,今から15年程前までは電信電話債券というのがあり,質入れもできたし売買もできたが今はない.
  そして現在は施設負担金となっている.週刊誌によれば,加入時の一時金は日本が最高で,欧米では2万円前後で財産扱いはしていないという.ところが,日本では企業・法人の場合税法上無形固定資産に相当し,売買可能だから減価償却は認めず,もし市場価格が回復の見込みなければ固定資産の評価損として損金加入ができるという.しかし,企業はそれができていいが一般庶民はどうなる.地価の株が下がったと同じで我慢しろというのか.
  NTTは,「私どもはあくまで工事代金として頂いているので,たとえ加入権の資産価値が下がっても何の関係もありません.」という.集めた加入権は4兆4千億円にもなるというのに.最近携帯電話の普及で赤字の公衆電話を全国で13万台もはずしたというから,今さら返してくれそうもない.それなら,売っても二束三文の「加入権」を後生大事に同じ価格で麗々しく財産目録に載せるのは止めて,不良債券として早く清算処理すべきだ.(寅)